キャバクラの呼び込み

 錦糸町にいつも声をかけて来るリーゼントの呼び込みがいる。
 場所柄風俗の呼び込みだと思っていた。過去に酒を飲みに行きたいと告げたら、ロシアンパブの呼び込みを紹介してくれたこともあった。
 昨日久しぶりに飲みに行きたいと告げたら、「日本人でいいですか?」と聞き返してきます。
「いいよ」
「うちじゃあ駄目ですかねぇ。キャバクラですけど」
 同意はしたものの、信じられない。騙されたのでは?不安が頭の中を過ぎる。
 店に入るとほぼ同時に黒いカーテンをめくってホステスとおぼしき女性が顔を出す。間違いない。ここは風俗で、カーテンの奥で卑猥なサービスをしてくれるのだ。
 店のスタッフに案内されて先程の女性がテーブルに付いた。
 水割りを作る横顔がいかにも不健康そうに見える。毎日接客する度にシャワーを浴びているせいだろう。その時はそう思った。
「お客さん、どうしたんですか?」
「ここはどんな店ですか?」
「普通のキャバクラですけど」
「本当に?」
「えぇ、そうですけど」
 その瞬間、今まで思っていたことを一気に喋った。
 呼び込みを風俗の呼び込みだと思っていたこと、店に入った時点で信じていなかったことなど
 最後にキャバクラの常道少しエッチなジョークも忘れない。
「ここで、サービスされても困るしなぁ」
 カーテンの奥はホステスの更衣室でしかなかった。テーブルを移動する度に化粧を直しているのだ。次々とホステスが出て来る。
「次々とホステスが出て来る。まるでドラえもんのポケットだなぁ。道具が出て来るポケットもいいけど女の子の出て来るカーテンもいい。あれ売ってくれる?」
 爆笑だ。
「お客さん。駄目ですよ。中で着替えているんですから。この席からよく見えるんですよね。」
 その席で粘ったが、着替えを覗くことはなかった。やはり向こうが上手だった。