サラ金崩壊
 12月4日付けの朝日新聞朝刊によると武富士の11月における営業貸付が15億円程度にとどまったようです。ちなみに記事によれば、武富士は絶頂期の営業貸付は880億円もあったようで、2%以下に落ち込ませた意図は過払いの請求に応じるため、現金が必要だからとの話しです。
 金を貸さない消費者金融なんて、シャリを炊かない寿司屋みたいなもので営業をする気があるのかと言いたくなってしまいます。
 第一、銀行が簡単に金を貸さないから我々の存在意義があると言っていた業界の会社が貸し渋りをしているんですから、あきれるとしか言えません。
 武富士や同社の社員と付き合ってみると、あまりの非常識さに、逆に私の常識が間違っているのではと思い込まされてしまいます。同社の本社に入りますとエントランスの正面に多分社長のだろうと思いますが顔写真を印刷した大きな幕が張られているのに驚かされます。ある方と過払いの話しになったのですが、今年になってからでも「私達は間違ったことをしていない、出資法と利息制限法の二つの法律があって、出資法に従った民法で認められた契約どおりの利息を取り続けただけだ。我々は法律を守り続けている。違反をして摘発を受けたことはない」と言い切ったのです。私は「法律に従うだけが、正しい経営ではありません。時代を見つめて時代に合った経営をするのが正義です。」と教えたつもりなのですが、どこまで理解されたのでしょうか?
 最高裁消費者金融会社の高利が違法だという確定判決が最初に出たのは2006年のようです。それから3年もの間、この問題を全く放置したままとは言いませんが、充分な手当てであったとは言えないでしょう。
 ちょっとした試算をしてみます。金利29.2%で貸付残高が帳簿上50万円のお客さんは1日に400円の利息を生んでくれます。これが、利息制限法に基づいた金利18%だと246円67銭の金利しか生んでくれません。更にそういったお客さんは利息制限法に基づいて残高を計算しなおして見ると過払いが生じていて残高がマイナスということが多々ありますから、仮にそれが20万円だとしたら逆に27円を払うことになります。これでは正しい経営はできません。
 それにも関わらず、去年の今頃でも、大きな駅には同じ消費者金融の店舗が何店舗もありましたし、ちょっとした駅で銀行の店舗が1社しかないけど全ての大手消費者金融の店舗は幾つもあるという駅は幾つもありました。広い店舗を借りて効率的な店舗運営ではなく、狭いながら安い事務所を数多く借りてといった戦略をとったものと考えられます。
 さらに、法律の知識が少しでもある人間なら最高裁で確定判決が出ている内容であれば争うのは無駄だというのは常識です。にも関わらず訴訟に持ち込み、結果、訴訟費用と合わせて相手に支払う破目に陥りました。
 お客様からクレームが入った場合、素直に謝罪し、余計なお金を返済するのは民間企業の常識です。それには5%の金利は付きませんし、訴訟もありませんから人件費も安く抑えられます。ましてや訴訟費用として印紙代や証人への日当も不要です。
 裁判になって弁護士に依頼するとなると大体20%が弁護士に取られるようです。裁判を起こされる前に過払いを請求してきた相手に減額をお願いするといったことは考えなかったのでしょうか。
 現在、消費者金融業者がおかしくなったのは
1.正確な経営状態を把握しようとしなかった、できなかった
2.不必要な店舗拡大競争
3.クレーム対応のまずさ
にあるといえるでしょう。
 少なくとも、2年前に手を打ち始めていればもう少し何とかなったと思われます。